ブレーキ豆知識

ブレーキ豆知識

ブレーキってなに?

みなさんは車の購入を考えたとき、どこに重点を置いて決めますか?
スタイル、エンジン出力、経済性、内外装備など・・・と人によってまちまちでしょう。
しかし、この中で「この車は安全だから買おう」と購入する人は果たしてどれだけいるでしょうか。

多少の装備の差はあるにせよ、昔と比べるとより安全に作られているのが当り前のような感じです。

しかし、車の基本性能は 「走る」 「曲がる」 「止まる」 です。
大きなトラックから小さな軽自動車までこの三原則は変わりません。

"走らなければ事故は起きない" (オカマは掘られるかも)
"曲がらなければ止まれば良い" (これも気をつけなければ)
しかし "走っている最中に止まらなかったら"
と考えるとゾッとしませんか?

ここでは地味だけど頼りになるブレーキについて少しずつひも解いていきましょう。


第1回 ブレーキの種類

皆さんの中でブレーキの種類がいくつあるかご存知の方は何人いらっしゃるでしょう。
答えは・・・

1. フートブレーキ・・・減速したり、止まったりするブレーキの事。これは簡単。足で踏むブレーキです。

2. 駐車ブレーキ・・・・文字通り駐車するときに使うブレーキ。一般的にはサイドブレーキとかパーキングブレーキと呼ばれています。

3. 補助ブレーキ・・・・これはちょっと難しい。エンジンブレーキ、エキゾーストブレーキ、リタ-ダー、etc

と、答えは大きく分けて3つ、みなさん!いくつ知っていましたか。
普通乗用車にはフートブレーキ、駐車ブレーキ、エンジンブレーキがどの車にも付いていますね。

フートブレーキ

フートブレーキ

皆さんよくご存じのブレーキです。

駐車ブレーキ

駐車ブレーキ

こちらもよくご存じですよね。

補助ブレーキ

補助ブレーキ

アクセルを離したら、車は減速します。
それが、エンジンブレーキです。

トラックには、エキゾーストブレーキやリターダーといった装置もあります。


第2回 ブレーキの歴史

ブレーキなる物は、一体いつからあるのでしょう?
・・・それは・・・すごく昔です。

最初に現れたのは、スティックみたいなブレーキ。
車輪に穴が空いていて、そこに棒を差し込んで止めていたようです。

更に時代は進み、古代ギリシャ、ローマ時代の戦車に使われたのがチェーンのブレーキ。車軸にチェーンを巻き付けて強く絞って止めていました。

更に時代は進み馬車の時代になると、車輪の外側にブレーキシューを押しつけて止めるタイプが使われるようになりました。

これらの、ブレーキと呼んでいいのか分からないような物から更に時代が進み、いよいよエンジンを搭載した自動車が登場してくると、本格的なブレーキ装置が必要となり、今の自転車に使われている様なブレーキが考えられました。

次回は、更に進歩したブレーキ機構を紹介します。

スティックみたいなブレーキ

スティックみたいなブレーキ

最初のブレーキ
パーキングブレーキと同じ役目ですね。

チェーンのブレーキ

チェーンのブレーキ

チェーンの一方は車体に固定されていて、もう一方の端を手で引きます。

車輪の外側にブレーキシューを押し付けて止めるタイプ

車輪の外側にブレーキシューを押し付けて止めるタイプ

ブレーキシュータイプ
だいぶ近代的(?)になってきました。

今の自転車に使われている

今の自転車に使われている

自転車のブレーキ
このブレーキの中身は、こうなっています。↓

今の自転車に使われている

こんな感じです。最初の頃のブレーキと比べると大分進歩しています。 


第3回 現在のブレーキ

現在のブレーキ

1920年代に機械式のブレーキ(前回の自転車のような物)から、現在のような液圧式ブレーキが導入されました。

ブレーキペダルを踏んで車が減速・停止するのは、誰でも知っていると思います。しかしよく考えてみると重量10トン、20トンある大型トラックが時速100kmなどの高速で走っているのを止めるケースもあるのですから、大きな力(止めるための性能)が必要になります。

今回はブレーキペダルを踏んだ時の小さな力が、どのようにして大きな力に変えられているのか? というブレーキ機能の秘密をいくつか紹介して行きたいと思います。

てこの原理

てこの原理

みなさんは中学校で勉強した「てこの原理」という言葉を覚えているでしょうか?この原理がうまくブレーキペダルに応用されているんです。

Aが支点、Bが力点、Cが作用点です。Bを踏んだ力がCには数倍になって伝わるわけです。小さな力を大きな力に変える

一つ目の秘密がこれです。

パスカルの原理

「パスカルの原理」この言葉をみなさん覚えていますか?これもブレーキにうまく応用されているのです。
まず紹介する前に「パスカルの原理」を忘れてしまった方のために、簡単にその原理について説明したいと思います。

パスカルの原理

右図のような容器にA,Bとも同じ重さのものを同じ面積のものの上に浮かべたとします。
このとき両方がつり合うのは一目瞭然ですよね。

パスカルの原理

では次の場合、Bの面積(S)と重さ(W)をAの5倍にしてみたらどうでしょう?
実はこれもつり合うんです。
A'の力でも相手の面積を大きくしてあげることでB’のように大きな力を発生(釣合)させることができるのです。

パスカルの原理

A,BとA',B'の間には常にW/S=W'/S'の関係が成り立っています。これがパスカルの原理ですね。
どうですか思い出しましたか?

この二つの原理をブレーキで応用されています。それが右の図になります。
これによりさらに数倍の力になっているわけです。

なんだか中学校の物理の時間になってしまいましたね。中学校で勉強した簡単なことが、ブレーキを踏む小さな力を、車が止まるのに必要な大きな力に変えるまでの大切な役割をしていたんですね。

次回は”ペダルの先には何が・・・・”と題してお伝えします。


第4回 ブレーキペダルの先には何が

第4回 ブレーキペダルの先には何が

今回は「ブレーキペダルの先には何が・・・・・・」と題してお送りしていきます。

さて前回の復習をしましょう。ブレーキペダルを踏む力は何の力に変えられますか?

答えは液圧ですよね。前回のパスカルの原理のところで理解してもらえたかと思います。

「ブレーキペダルの先には何が・・・・・・」それに当たるのがマスターシリンダーです。ここで力を液圧に変えているわけです。

マスターシリンダーは車のどの部分に設置してあるのでしょうか?

ボンネットを開けてもらうと運転席奥側に設置されています。詳しくは右の写真になります。

マスターシリンダーでは注射器と同様にして液圧を発生させています。注射器の場合ピストンを押すと水が先端から飛び出しますよね。マスターシリンダーではブレーキペダルを踏む力がピストンに伝わって、ピストンを押し込みます(下図)。そしてブレーキ液(フルード)を押し出して液圧を発生させています。ここではゴム部品(カップ)によって液を外部へ漏れないようにしているところがポイントです。

もしカップに傷がある場合には液が外部に漏れてしまいますので、いくらブレーキペダルを踏んでもブレーキが効かなくなることもあるんです。定期的に点検または交換をする事が大切ですね。

ブレーキを解除した時にはどうでしょうか。

ブレーキペダルから足を離すと内部に組込まれているスプリングが戻る力が働きます。その力でピストンがもとの位置まで戻され液圧の解除が行われています。

(シングルマスタ参照)

第4回 ブレーキペダルの先には何が

どうですか?マスターシリンダーの基本的な機能を理解してもらえましたか?

普段、何気なくブレーキペダルを踏んでいると思いますが、その先ではこのようにペダルを踏む力を液圧に変えるための大切な動作が行われていたんですね。ブレーキは自動車部品の中でも人命を預かる重要な部品です。自動車を運転する際、常にブレーキの効きが良いか悪いか確認してもらえればと思います。また効きが悪い場合には整備工場などでの点検をお勧めします。

近年では今回紹介したマスターシリンダーに応用が加えられ、さらに安全性を高めたものが採用されています。

次回は「現在のマスターシリンダーの機能と安全性」と題してお送りしていきます。


第5回 現在のブレーキマスターシリンダーの機能と安全性

前回のブレーキ豆知識でマスターシリンダーの基本的な原理がわかっていただけたと思いますが、今回はブレーキマスターシリンダーの機能について説明いたします。

ブレーキマスターシリンダーには前回紹介したようなシングルタイプ(図1)とタンデムタイプ(図2)があります。

図1 シングルタイプ

図1 シングルタイプ

右の図から一目瞭然だと思いますが両者の違いはピストンの数です。
シングルは文字通りピストンが1個でタンデムは2個です。タンデムは縦列という意味で、ピストンが縦に2個並んでいることになります。
タンデムマスターシリンダーの一番の特徴はブレーキ系統の何処か1箇所から液洩れが生じても、もう片方の系統でブレーキが効く“2重安全機構”という仕組みになっていることです。この仕組みが現在主流の機構で、ブレーキの安全性に大きく寄与しています。
それでは、“2重安全機構” とはどのようなシステムなのでしょうか?これから見ていきましょう。

図2 タンデムタイプ

図2 タンデムタイプ

右図右側で液洩れが発生した場合、プライマリーピストンを押し込むと右側で液圧は発生せずセコンダリーピストンがそのまま右に移動します。スプリングが押し縮められ、セコンダリーピストンが奥にぶつかると、左側で液圧が発生してブレーキが効くことになります。

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反対に左側で液洩れが発生した場合、液圧が発生しないので、プライマリーピストンがセコンダリーピストンを直接押し、右側に液圧を発生させブレーキが効くことになります。
このような機構のほかにも、実際のマスターシリンダーにはブレーキフルードの液面が下がってくるとそれを警告する機能などがついており、安全性を保つ工夫がなされています。
もしも皆さんの車のブレーキに異常を感じたら大至急整備工場で診断される様お願いします。
右の図のような状態のときはブレーキの効き具合が極端に低下します。
効きの低下は停車距離を長くしますので、最悪の場合事故につながる恐れがあります。
しかし、定期的に整備を行っていれば心配はございません。
次回は 「ホイールまでの道のり」 と題してお送りしていきます。

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第6回 ホイールまでの道のり

今回はブレーキマスタシリンダーで発生した液圧がどのように伝わっていくかを勉強していきましょう。
まず、ブレーキペダルを踏むと、その踏んだ力がマスターシリンダーを伝わって、マスターシリンダーの中のブレーキ液を押し出すポンプのような役目をしているのは前回ご説明したのでお分かり頂けたかと思います。
そこで発生した液圧は下の図のように伝わって行くのです。

ホイールまでの道のり

ホイールまでの道のり

各部品の主な役割

① ブレーキペダルフットブレーキともいい、踏力を液圧発生装置に伝達するための装置。てこの原理を応用し、ペダル比により踏力を数倍に増大させます。
② 真空倍力装置
(ブレーキブースター)
ブレーキペダルで増大された踏力をエンジンの吸気負圧を利用して制動力を増幅させる装置。 軽いペダル踏力で確実な制動力を発揮するもので、現代では軽自動車から大型車までほとんどのクルマに採用されています。
③ ブレーキマスター シリンダーブレーキペダルに加えられた踏力を液圧に変換する装置。構造は注射器のようなもので、ブレーキ液を圧縮吐出する圧縮室とブレーキ液を蓄えるリザーバータンクより構成されています。
④ 圧力制御弁
(NPバルブ)
制動時、車の重心荷重が前輪に移動し、後輪がロックしスピンすることを避けるために後輪の液圧を調整し制動力を分配させるための装置です。
⑤・⑦ ブレーキホースブレーキ液(液圧)を伝達するためのホースで、ホイール部分やサスペンション部分などのブレーキパイプでは対応できないフレキシブルに動く場所に使用します。
⑥ フロントブレーキ
(ディスクタイプ)
車輪と一体に回転するブレーキディスクの両面にブレーキパッド(摩擦材)を押し付けて制動力を発生する外部押圧式ブレーキ装置。放熱性に優れ、制動力も安定しています。
⑧ リアブレーキ
(ドラムタイプ)
車軸に取り付けられたドラム内側にライニングを張った2個のブレーキシュー(摩擦材)をホイールシリンダーからの液力により広げ、圧着して制動する内部拡張式ブレーキ装置。放熱性に劣っていますが制動力は強いです。

以上のように、ブレーキペダルを踏んで押し出されたブレーキ液はブレーキパイプ、ブレーキホースを通って車輪に付いているディスクブレーキやドラムブレーキを作動させることによって、自動車を止めるわけです。
もしも皆さんの車のブレーキに異常を感じたら上の部品のいずれかに問題がある可能性があります。すぐに整備工場に行って診断してもらいましょう。
ブレーキは皆さんの命を預かる大事な部品です。定期的な点検は必ず必要なのです。